建築倉庫ミュージアム、企画展として『「建築」への眼差し -現代写真と建築の位相-』を開催。
発明家ニセフォール・ニエプスによって撮影された世界で最初の写真が、作業場の窓から見える納屋と鳩小屋であったように、19世紀に誕生した写真は当初から建築と強く結びついていました。 特に20世紀の近代建築運動では、多くの建築家が自らの建築を社会に認知させ、その運動を推進する手段として写真を重視していました。 そこで強調されたのは、写真が有する記録媒体としての透明性であり、この傾向は今日でも建築ジャーナリズムを中心として大量に生産・消費される建築写真に受け継がれています。 その一方で、そうした建築写真とは微妙に異なる立ち位置から建築に関心を示す写真家や現代美術家がいます。
本展覧会は、国内外で活躍する13名の作家の作品を通じて、現代の写真表現と建築の間に存在する、より多義的で複雑な関係を示すコンセプトのもとに企画されました。 会場にはトーマス・ルフ、カンディダ・へーファーら「ベッヒャー派」から、杉本博司、ホンマタカシなど多岐にわたる作家による建築写真と同時に、被写体の中から6つの建築物の模型も併せて展示します。 模型を通じて建築物の全体像を把握することで、個々の写真表現の魅力や特徴がより深くお楽しみいただけます。
建築」への眼差し -現代写真と建築の位相-
【日程】
2018年8月4日(土)~10月8日(月・祝)
開館時間:火~日 11時~19時(最終入館18時) 月曜休館(祝日の場合、 翌火曜休館)
【会場】
建築倉庫ミュージアム
(〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10)
https://archi-depot.com
【料金】
入場料:一般 3,000 円、大学生/専門学校生 2,000円、高校生以下 1,000 円
【出品作家】
トーマス・デマンド
マリオ・ガルシア・トレス
畠山直哉
カンディダ・へーファー
ホンマタカシ
今井智己
ルイザ・ランブリ
宮本隆司
トーマス・ルフ
杉本博司
鈴木理策
米田知子
ジェームズ・ウェリング
【本展の見どころ】
■国内外で活躍中の13人の写真家、現代美術家による37点の写真作品と映像作品1点を展示
■「サヴォア邸」(ル・コルビュジエ)、「トゥーゲントハット邸」(ミース・ファン・デル・ローエ)、「カノアスの邸宅」(オスカー・ニーマイヤー)といったモダニズム建築の名作からヘルツォーク&ド・ムーロンの近作「エルプフィルハーモニー・ハンブルグ」まで、国内外の13の有名建築が被写体
■被写体となった6つの建築物の模型を展示
■建築家・Atelier Tsuyoshi Tane Architects(建築家:田根剛)による、展覧会テーマを踏まえた会場設計
■作家について:
13名の作家の作風は多岐に渡りますが、そこにいくつかの傾向を見ることができます。 例えば建物へ私的な視線を向け、特定の時間と場所における一回性の経験として建築を捉えようとする一群の作家達がいます。 写真は外の世界を記録すると同時に撮影者の内面を反映します。 彼らにとって建築は空間的かつ時間的な体験であり、そこで得た印象は撮影された写真にも色濃く現れています。 極端な場合は、一般的な建築写真に見られるような客観的な記録性はほとんど顧みられません。 またそれとは逆に、写真の持つ透明な記録性を重視しつつ、それを固有の作家的表現へと転化するアーティストたちがいます。 デュッセルドルフ美術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャーに師事した、いわゆる「ベッヒャー派」にはこの傾向に属する作家が数多くいますが、今回はそのなかからトーマス・ルフとカンディダ・へーファーの作品を紹介します。 そして最後は、建築を概念的に扱う作家達です。 具体的な建築物を撮影することから離れつつも建築を作品のテーマする、あるいは個々の建築物の背後にある建築家の思考という不可視のものを写真で捉えるなど、より自由で多彩な実践が含まれます。
【主催】
建築倉庫ミュージアム
【企画】
鈴木布美子
【会場設計】
Atelier Tsuyoshi Tane Architects(田根剛)
【展覧会企画協力】
アート&パブリック株式会社
【協賛】
CASAMATTA / BIBI GRAETZ、株式会社伸和工務店design field laboratory、株式会社東京スタデオ
【協力】
青木淳建築計画事務所、IZU PHOTO MUSEUM、大林コレクション、ギャラリー小柳、ShugoArts、大成建設株式会社、タカ・イシイギャラリー、TARO NASU、東京大学総合研究博物館小石川分館(建築ミュージアム)、ユカ・ツルノ・ギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート
トーマス・デマンド
メディアから引用した事件の写真を基に、着色紙や段ボールを使用してその現場を実物大の模型で再現し、それを再び撮影した大型の写真作品で知られる。 近年建築家の模型に注目した新シリーズを手掛けている。
マリオ・ガルシア・トレス
1975年メキシコ・モンクローバ生まれ。 現在、メキシコ・シティを拠点に活動。 1960年代と1970年代のコンセプチュアル・アートに関連する美術史およびその個性を追求し、詩的に物語化するというアプローチによって作品を制作。
畠山直哉
1958年岩手県陸前高田市生まれ。 筑波大学芸術専門学群にて大辻清司に師事。 1984年に同大学院芸術研究科修士課程修了。 以降東京を拠点に活動を行い、自然・都市・写真のかかわり合いに主眼をおいた作品を数多く発表している。
カンディダ・へーファー
デュッセルドフル美術アカデミーで映像を学んだ後、ベッヒャー夫妻に写真を学ぶ。 これまでにクンストハレ・バーゼルやニューヨーク近代美術館など多数の美術館で展示。 2002年ドクメンタ11に出展、2003年ベニス・ビエンナーレにドイツ代表として出展。
ホンマタカシ
1962年、東京生まれ。 建築模型を写した「Japanese Architectural Models 2015」、有名建築を独自の視点で捉えた「Architectural Landscape」など建築をテーマとする作品集多数。 近年はカメラオブスキュラで都市を撮るピンホール作品のシリーズの発表も継続的に行っている。
今井智己
1974年生まれ。 『真昼』(2001年)や『光と重力』(2009年)等、日常的な風景に静謐さを湛えた作品で知られる他、福島第一原発と向き合った『Semicircle Law』(2013年)等も発表。
ルイザ・ランブリ
1969年、イタリア・コモ生まれ。 ジュゼッペ・テラーニをはじめ、ル・コルビュジエ、ルイス・バラガン、SANAAなどによる近・現代建築の名作とされる作品を、独自の視点で撮影した写真作品で知られる。
宮本隆司
1947年生まれ。 建築物を中心に、都市の変貌・崩壊と再生の光景を独自の視線で撮影。 建築解体現場を捉えた「建築の黙示録」(1986年)や香港の高層スラムを撮った「九龍城砦」(1988年)などで知られる。
トーマス・ルフ
1958年、ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ。 ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻のもとで写真を学び、ポートレイト、建築、ヌード、天体など明確なコンセプトに基づくシリーズを展開。 近年はインターネット上のイメージや古写真など、あらゆる写真イメージを画像処理した作品を制作。
杉本博司
1948年東京御徒町生まれ。 1970年渡米、1974年よりニューヨーク在住。 活動分野は、写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理、と多岐に渡る。 写真作品では、「海景」、「劇場」、「建築」などの連作で知られる。
鈴木理策
1987年東京綜合写真専門学校研究科修了。 写真というメディアの特性と「見ること」への関心に基づく作品を制作。 2006年青森県立美術館開館に際し刊行された『JUN AOKI COMPLETE WORKS 2 AOMRI MUSEUM OF ART』に119点の撮り下ろし作品を発表。
米田知子
1965年 兵庫県生まれ、ロンドン在住。 記憶と歴史をテーマに作品制作を続ける。 歴史的な出来事のあった土地に目を向けた「Scene」などのシリーズや、20世紀以降の知識人の眼鏡をモチーフにしたシリーズ「Between visible and invisible」などで知られる。
ジェームズ・ウェリング
1951年アメリカ・コネチカット州ハートフォード生まれ、LA/NY在住。 写真を主な表現媒体とし、アナログやデジタル、フォトグラムやフォトショップ等、多様な手法で制作する。 作品はニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館などに収蔵されている。