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ILL-BOSSTINO [THA BLUE HERB] 『20YEARS, PASSION & RAIN』(LIVE DVD) リリースインタビュー

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ILL-BOSSTINO [THA BLUE HERB] 『20YEARS, PASSION & RAIN』(LIVE DVD) リリースインタビュー

特別な日、長い年月の中でそう言える日はどれだけあるだろうか? 2017年10月29日、日比谷野音で行われたTHA BLUE HERB 結成20周年ワンマンライブ。この日この場所にはサオラーと名付けられたその名前ほど可愛げはなく、時間の経過と共に激しさを増し続ける台風22号が接近していた。その逆境の中で集まった3000人のオーディエンスを前に彼らが伝えたかったことは… 3時間15分ノーカットで収録されたLIVE DVD『20YEARS, PASSION & RAIN』の発売にあたり、MC:ILL-BOSSTINOに話を伺った。


ILL-BOSSTINO [THA BLUE HERB] Interview

—– 日比谷野音での20周年ライブから5か月位が経ちましたがまだ余韻のようなものは残っていますか?

そうだね、このDVDが発売するまではずっと近くにあるかなって思っているけど、発売したらそれで終わりですね。

—– 今回、結成20周年という大きなキーワードもある中で、野音という場所に対しての拘りみたいなものって元々あったんですか?

いや、正直ライブをやるまではなかったですね。野音自体、1度SIONのライブを昔観に行ったくらいで、他の方々が言うような聖地のような感覚はなかったよね。でもまあ終わった瞬間にここでやったライブっていうのは、THA BLUE HERBを続けていく上で語られていくライブになるだろうなっていうのが分かったので、その瞬間から野音は特別なものになったって感じですね。

—– 元々それほど想い入れもなかった野音という場所を今回の会場にした理由っていうのはどういった部分ですか?

前に、Ken Yokoyamaさんの武道館でのライブにSLANGが出るっていう事で仲間達と観に行って、終わった後、仲間と「俺たちもいつか武道館でできたら良いね」なんて話を飲みながらしていたときに「いきなり武道館はないでしょ?」ってところから「だったら野音が良いんじゃないか?」という流れで初めて野音ってワードが出て、20周年だし、ちょっとチャレンジしてみようかって感じで始まりましたね。

—– それから会場使用のための抽選に向かっていったわけですね。

4月からずっと外れ続けて、最後の最後で当たったって感じですね。

—– あの日(2017年10月29日)を20周年の大きなイベントにしようっていうのはその抽選を引き当てたときに決まったわけですね。

そうそう。もし野音がダメならダメでLIQUIDROOMで出来たら良いなって、とにかく何かをやりたいなとは思っていたけどね。

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—– そしてライブ当日、見事に台風直撃という事で、天気予報もあの辺ダメだって言ってる中で開催自体のアナウンスは結構早かったですよね。

俺はどういう状態であれやるつもりだったし、ほんとにその年の野音の最後の営業日なので、それを外したら次はないし、1月1日に発表してからずっとその為に生きてきたし、主催も俺たちなので、レーベルとしてそこにベットした金も含めて、物販も含めてその日ですべて回収するつもりだったから、絶対にやるつもりだった。それでも後ろのPAテントが風で飛ばされたら、技術的に使っているのが電気だから、それはアウトで、その段階で中止っていうのは聞いていたので、そこだけは恐れていたけど、でもまあ基本的にはやるつもりだったよね。

—– 当日のMCの中で「行くも地獄、引くも地獄」って言葉がありましたけど、その言葉が状況を現していたのかなと。

ほんとにそういう感じだったね。実際始まってしまえば最後まで行くしかないし、この日を楽しむ為に俺達も頑張って努力してきたんで、雨ごときに邪魔させるわけにはいかなかったよね。

—– そのMCは「どっちみち開き直るんだから開き直っちまった方が勝ちだぜ」って言葉に繋がっていくわけですが、開き直ることで入ったスイッチや、生まれたアイディアとかあったりしたんですか?

でも、そうは言いながら、やってる俺達がまず楽しめてないと観てる3000人も楽しめない。なんにせよ俺とDYEはどういう状況であれやるけど、お客さんはそこで受け身なわけで、俺自身がまず乗り越えないとお客さんも乗り越えられないって思ったんで、開き直るうんぬんの前に自分をそうやって鼓舞してたんだよ。実際辛かったし、20年間やって来た中で一番厳しい条件だったんで、笑顔こそ出して、みんなを連れて行こう、こんなの余裕だよって振舞っていたけど、一小節一小節超えるのに精一杯だったね。

—– あの悪天候がもたらした弊害って具体的にはどういった部分が厳しかったですか?

ワンマンで3時間、俺らの後に誰かが出てくるわけでもないし、全て俺たちに委ねられている中で、気温もそうだし、口にも目にも雨が入ってくるし、背中からも雨が入ってくるし、まあ、普通にハードだったね。

—– そんな状況下でありながらも、セットリストだったり、世界観はTHA BLUE HERBの20年を凝縮したような内容にできたかなって感触ですか?

ですね。実際20年って一言で言っても、最初の方だけ聴いてしばらく離れていた人もいるだろうし、途中から合流してきた人達も色々な局面で合流してきている。だから目の前にいる3000人はみんなそれぞれ違う思い入れを持って来てくれているわけで、そういう人達が一堂に介した中で20年という時間の流れを表現するのにはどういう曲の組み合わせが良いかっていうのは8月くらいから凄い考えたよね。

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—– ラストで『この夜だけは』の96年当時の音源を流したりしたのは20周年ならではの事ですよね。

そうだね。まあ結果的には台風のおかげで、あの場でも何かを乗り越えなくてはならないっていう夜にはなったけど、やる前は本当にお祭りにしたかった。昔の曲、96年の曲をああやって流したっていうのも、1stの曲とかは普通にライブに組み込んでやっているけど、やっぱり今の歌いまわしで、今の声になっちゃうんで、ああいう96年に録ったものをそのまま流すことによって俺自身に起きた変化っていうのも如実に現れるわけで、そういうタイムカプセルとして20年の長さを感じてもらうには良いかなって思ってやりました。

—– 確かに変化と年月は感じましたね。実際に今のようなスタイルになっていったのは1stからって感じなんですか?

96年のあの頃はまだそういう感じではなかったね。まだ過程だったね。

—– 明確にこのスタイルでいけるぞっていう手応えみたいなのを感じた時ってあったんですか?

1stの『ONCE UPON A LAIF IN SAPPORO』を録った時だね。その時に感情を前面に出さないでも言葉の韻の踏み方の転がし方でグルーヴとか曲のメッセージっていうのをどんどん繋いで行けるっていう小さな手応えはそこで感じたけど、でもまあ去年のレコーディングまでずっと試行錯誤は続いてるよ。

—– 音源でもライブでも理想の完成形っていうのは頭の中にあったりするんですか?

ライブはね、いくらそう考えても、お客さんありきのことなんで、そこにひとつの希望を込めた形でしかライブは想像できないね。だから今回のライブのセットリストの組み方ひとつにしても、俺達なりにできるベストってことを考えてセットを組むけど、やっぱりそこには雨もしかり、お客さんのノリしかり、色々なものが入って初めて完成するわけで、こうなると良いなっていう希望的観測はしているけど、その通りなることもあれば、ならないこともあるし、ならない時も、ならないならならないなりに今ある状況を組み込んでどうやるかっていうのもライブの鍛錬で、ずっと続けてきた柔軟性だし、だからまあライブは開けてみないと分からないよね。

—– 20年続けて、最近でも新たな発見とかあったりしますか?

全然あるね、それはいつでもあるよ。あの日のライブなんかも地に足が着いていたのなんて最後の2曲位だったと思う。それ位ハードだったし、あの野音の後も結構色々な街でライブをやったけど、最後の最後でこうすれば良いんだっていう手応えもあったし、毎回そういう気付きや発見はあるね。

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—– ずっと続けてきた中で今、自分たちは時代遅れなのか、時代の先をいってるのか、そういった部分の意識、感覚って何かありますか?

それは最先端が何なのかって話しになってくるよね。アメリカのヒップホップのチャートの上位にいる人達が最先端だっていうのであれば、俺達は究極の時代遅れだけど、それは俺が考えている最先端とはちょっと違って、46歳になって3時間台風直撃の中ライブが出来るか?って、少なくとも3時間お前には歌いたいことがあるか? 46歳になってまで自分の限界をマイク1本で乗り越えようとする気概がお前にはあるのか?っていう事でいうと俺の周りの46歳辺りのラッパーを見回しても、他で1MC1DJでやっている人間はほとんどいないし、アメリカのことは知らんけど、少なくともそういう意味では俺は最先端の1人だね。

—– あの日、3時間を超えるライブが終わった瞬間にステージ上から「大成功」って言葉が出たのはやりきったっていう感覚からですか?

100%そうだね。

—– 客席にいたお客さんの表情とかからも。

もちろん。俺の中での達成感っていうのは俺があのセットを無事に終わらせたって事ではもちろんなくて、やっぱりあそこに最後までいてくれたお客さんと笑い合えたっていう、この俺達の無茶な遊びっぷりを全員で共有できたって事が大成功だね。

—– THA BLUE HERBとしてひとつの答えを提示した中で、それがどう伝わるか、どう解釈するかは観ている人がそれぞれ感じる部分ですよね。

もちろんそうだね。俺は俺で答えを出すけど、俺があの日に感じた事が3000人の総意かと言えば100%そうではないし、みんなそれぞれ違うんで、だからそこは委ねられているよ。みんなに渡されているっていうか、DVD自体もそうだし、発売した時点で俺達の手は離れているんで、買って手にした人がそれぞれの解釈をすれば良いと思うね。俺にとってはあれを観れば一目瞭然でしょって感じだから。あれを観て、好きか嫌いかは別にして、こいつら体力もない口だけのラッパーだなとは誰も思わないと思うし、こいつのメッセージは薄っぺらいなとは思わないはずだから、そこは絶対に伝わる。それでいいよ。そこから先は任せるよ。

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—– それと以前に20年やっていれば人の入れ替わりも結構あるみたいに言っていた中で、今回は再会のようなことも結構あったんじゃないですか?

本当にそういう人達がたくさん来てくれて、もちろんずっとサポートしてくれている人も、今のステージをずっと変わらず観に来てくれている人も日本中から来てくれた。そのお客さん同士もそこで、なんていうか、ライブでも言ってるけど、みんな運命共同体のような感じになっていたんで良かったよね。

—– 僕もただ観に行っただけなのに、あの日は色々な知り合いに会いましたね。それでDVD観たら結構みんな映り込んでるんですよね。

良いね。本当にそういう場にしたかったし、ああやって意図的にオープニングもエンドロールもお客さんをたくさん映したのは来てくれた人達、そこにいた人達を残したかったからなんだよね。

—– 非常に感慨深い映像になっていると思います。そして活動の方はここで一旦一区切りって感じですかね。

そうだね。ここから先はまた良い曲を書いて、たくさん録音して、発表してって事を続けていかないと俺達にとっての未来はないんで、またああやってライブでみんなに会うために曲をたくさん作らないといけない。その入口にいるって感じですね。今はこのDVDをどう届けるかってことに時間を使ってるんだけど、これが出たら、ゆっくり旅をしたり色々見聞きして少しずつメモって行こうかなって感じだね。

—– 制作に関しての期限とかはとくに決めてはいないんですか?

いつものように出来たときが終わりだね。雇われミュージシャンじゃないんで、全部自分でやるから、納得するまで作ることができるのが自主制作の良いところだよね。ノルマも期限もあってないようなもんなんで、ゆっくり作るよ。

—– 大いに期待して待っています。

ライブもそうだし、こういう取材の場に自分がいる為には曲を書く以外にないんで、やっぱりあのライブの続きを俺もまたしたいし、できると思っているんで、これからまたたくさん曲を作りたいなって思います。

—– では最後に『20YEARS, PASSION & RAIN』の事を含め、メッセージをお願いします。

俺らもとても過酷な状況で楽しみ切って、映像で観てる限り、お客さんも楽しみ切ったと思う。なんか楽しむって事が簡単に見えて、段々簡単じゃなくなってくる事もあると思うんだよね。もちろん年もあるし、疲れもあるし、仕事もあるし、子育てもあるだろうし、飽きもあるし、昔は簡単に楽しめたこともだんだん楽しめなくなってく時もある。特に音楽なんて、ただ鳴っているだけなんで、自分の心の持ちようで楽しめるか楽しめないかっていうのがとても左右されてくるんで、でもまあこの46歳のラッパーがあんなに過酷な状況でそれでも自分自身がまず楽しむために台風に立ち向かって、それがガッチリ映像に映っているんで、みんなも色々あると思うし、何もない人なんていないと思うけど、楽しむという事、音楽に限らず人生もそうだし、毎日の仕事も介護も子育てもなにもかもだけど、逆境にあっても人生を楽しむというひとつの、楽しみ切ったやつの証拠品として残ったから。それを観てる人にももちろん楽しんで欲しいと思うし、みんなもそれぞれの人生を楽しんで欲しいと思うね。過酷な土砂降りな日もあるけれど。

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Interviewed by KISHIMOTO

リリース情報

THA BLUE HERB - LIVE DVD『20YEARS, PASSION & RAIN』

THA BLUE HERBの結成20周年を飾るべく2017年10月29日に日比谷野音にて行われたワンマンライブ。荒れ狂う台風の中、そこで、底で何が起きたのか、3時間15分、ノーカットで映像化決定。

THA BLUE HERBの8本目の映像作品「20YEARS, PASSION & RAIN」。昨年の10月29日に東京日比谷野外大音楽堂(以降:野音)で行われたTHA BLUE HERBの結成20周年記念ライブの模様を3時間超え、ノーカットで収録しております。

1年前に倍率700倍とも言われる使用権を自ら引き当てました。その日は、2017年の野音の営業最終日でもあり、THA BLUE HERBの結成20周年を飾る大一番として、文字通りこれ以上ない大舞台として用意されていました。既にチケットは数ヶ月前の時点で前売券、立見席が完全ソールドアウト。その日の意味を共有する3000人が、北は北海道、南は石垣島から約束の地へ集まりました。奇しくも当日は台風22号の直撃を受け、大荒れが確実視されておりました。主催する我々としては、1年かけて準備してきた約束の夜を中止するつもりは全くありませんでしたが、実際にどこまでの雨、風が襲いかかるのか、演者側にも、オーディエンス側にも、誰にも判らない状態でそのライブは始まりました。

このDVDには、開演後、そこで3時間15分に渡って何が起きたのかが、全て映っております。

余りにも衝撃的な雨量、その画はまるでTHA BLUE HERBの20年の苦闘の歴史そのものを連想させるがごとく、ただ、20年間の日々同様に道は前にしかなく、当然ながらそこで止まるTHA BLUE HERBではなく、「AME NI MO MAKEZ」に演目は進められていきます。「スクリュードライマー」「未来世紀日本」「路上」「CANDLE CHANT」といった、20年の歴史の中でフル尺で演奏される事のなかった、ほとんどのオーディエンスにとってライブでは初見となる曲達、加えて「愛別EP」収録の新曲達、そしてこれまで何度となくアップグレードされてきたライブ定番曲達が、まさにそこで、底で、聴くためにあったと思える程の説得力を持ち、同じ北海道から招かれたこの日のゲストであるJERRY “KOJI” CHESTNUTSとB.I.G. JOEの助力と共に、無慈悲にただただ降りしきる雨に抗いながら鳴らされていきます。そしてそんなステージ上の1MC1DJと共にあるオーディエンス。恐らくこれ程の長時間、これ程の豪雨にただただ打たれるという経験はそこにいる誰1人持っていない、隠れる物も何もない過酷極まる状況の中で、誰もが濡れ、震え、弱り、惑い、だが吠え、叫び、歌い、泣き、笑い、やがて一線を超えていく。

結局、最後まで雨は止まなかった。そして我々も楽しむ事を止めなかった。あの雨が災いだったのは最初だけだった。後は奇跡の演出とも呼ぶに足る、絶好の引き立て役だった。何の?伝説の大航海の生き残り、THA BLUE HERBとオーディエンスの、である。

全てを終えた今、こうして映像で観ていても、本当に、死地に向かうが如き大博打だったと思う。誰も遭難しなくて何よりだったとすら思える。出航は、ただの無謀な大馬鹿野郎と呼ばれてもおかしくなかった決断だった。開演直後には沢山あったカメラも、次々と使用不可能になり、時間が経つにつれてアングルが限られていく過程も含め、起こった事のありのままをパッケージするだけで狂おしい程に扇情的なシナリオである。

集まった3000人はその台風の直撃が避けられない事は確実だと既に知っていたし、そしてそれをTHA BLUE HERBが乗り越えると、そしてその先には楽しみがあると信じていたからこそ、実際にわざわざ警報下を怒り狂う天の水瓶のどん底に集まったのだ。そう、確かに身に覚えがある。我々はいつもそうだった。苦境を乗り越えた時の方が得られる楽しみは大きいという事を、20年前、我々は既に無自覚に知っていたし、そうだと信じていたし、それが希望の支えであった。それを20年後に3000人で改めて確かめ合った。そして最大最悪のド苦境を全開に楽しんでやったんだ!

あの一夜の記憶です。


THA BLUE HERB
『20YEARS, PASSION & RAIN』
2018.04.11 Release

LABEL : THA BLUE HERB RECORDINGS
CAT NO. : TBHR-DVD-008
FORMAT : DVD(初回生産分のみデジトールケース、無くなり次第通常トールケースに切り替わります。)
価格 : ¥4,167(税抜)

収録時間: 3時間15分

監督: 川口潤

初回店頭特典 : ステッカー
※注意 : 特典付与店舗に関しましては各位店頭で事前に御確認の上ご購入ください。無くなり次第終了致します。



MORE INFORMATION

THA BLUE HERB RECORDINGS
http://www.tbhr.co.jp/


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