2007年にロンドンで結成され、現在は都内を中心に活動するDay and Buffaloがニューアルバム『Ghost Walk』をリリース。それと共に新章をスタートさせた。作品毎にメンバーが入れ替わるという特殊なスタイルに至った経緯、イギリス時代の話、この先の目指すべき場所などをバンドの中心人物、森達希氏(Ba)に話を伺った。10/29に今作『Ghost Walk』制作時のメンバー形態と新たに動き出した最新メンバーによる2ステージを披露したリリースパーティーでのライブフォトと共にご覧ください。
森達希(Day and Buffalo)Interview
—–Day and Buffaloはリリースの度に毎回メンバーや作風が違うと伺ったのですが、どういった経緯からそういう形になっていったのですか?
元々僕が15歳の頃からイギリスに行っていて、17歳から音楽の仕事とかもしながらずっとやって来たんですけど、そこでバンドとかを組むと向こうって必ずビザがあるんで、それによって帰ってしまう人達が多かったんですよ。そうすると、せっかく上手くできてきたものがまた一からやらなくてはならなくて、それで辞めてしまう方もすごい悲しい顔をして辞めていくって感じだったんですけど、だけど決してそこで終わらずに僕が主軸としているから、いなくなった人もまた戻って来れるようにっていう事で、こういう形になりました。
—–これまで何作か出していて毎回入れ替わっているんですよね?
でも色々被っている所もあるんですよ。3人の時もあったり4人の時もあったりで。
—–その時その時のメンバーというのは作品を出すっていう前提で集まる感じなんですか?
そうですね。でも、ただ作品を出すってだけじゃ面白くないんで、そのメンバーに合った曲を書くようにはしていますね。そこから感情だったり、感覚だったりっていうものを注ぎ込むって感じで、だいたい、1年か2年位やって、その後続けるかどうかっていうのを、話す感じですね。各々みんな他に自分のバンドをやっていたりもするんで。
—–そのメンバーを際だたせるために主軸というか柱となる音楽はどういったものになりますか?
たぶん、今は僕がベースで弾き語りをやっているんですけど、ベースで全部を完結できる音にしているので、そこに合わせてみんな各々好きな事をおもいっきりやってもらうっていうスタイルですね。
—–サイケデリックだったり、ロックンロールだったりっていうDay and Buffaloが持っているイメージっていうのはその時のメンバーの個性であって、バンド本来の姿とは少し違うのでしょうか?
そうですね。でも、バンド自体がこういうスタイルなので、それが正しい姿ではあると思います。要は変わり行くことが。だから毎回同じことをしていると、僕自身も成長していない事になるので、その時のメンバーと色々な事をやってみるっていうのが僕の本意ですね。
—–元々イギリスに行ったきっかけというのは音楽をやるためだったのですか?
元々は俳優志望で英語が喋りたくて、15歳の時に親に頭下げて「行かせてください!」って。
—–15歳というと中学出てすぐ位ですか?
そうです、中学の時に頭下げて、それで、英語が喋りたくて、行かせてもらったものの全然しゃべれず。でも向こうでたまたまジャズバンドの先生に気に入ってもらえたんで、ひたすらベースの練習をしてましたね。
—–でもとりあえず喋れるようにはなったんですよね?
なったんですけど、ほんとに生きるか死ぬかみたいな感じでやっていたので、ほんとサバイバル・イングリッシュなので、いまだにメールとか英語で書けないです。ちゃんと勉強していないんで(笑)会話はできるんですけどね。
—–向こうで特に学校に行ったわけではないんですか?
一応、イギリスの高校に行ったんですけど、自分の好きな科目だけとれば卒業できるんですよ。それで、音楽とアート、それから日本語。
—–日本語を選択しちゃったんですかそこで(笑)?
(笑)そうなんですよ、日本語をとって逃げたっていう。だから英語はほとんどしゃべれないまま卒業しましたね。
—–その後、何歳までいたんですか?
結局25歳位までいたんですよね。
—–高校卒業した後のビザはどうしたんですか?
たまたま、舞台の音楽監督をする機会があって、日本の文化遺産になっているような島でシェイクスピアをやるっていうすごい面白い試みを『オフィスまとば』っていう役者さんの会社がやっていて、そこで有難いことに音楽監督をさせて頂いたので、それを提出したのと沢山の方から推薦状を頂きまして取得出来ました。
—–元々の役者志望が違った形で舞台と絡んでいったんですね。
そうですね。それがたまたま、シェイクスピアっていうイギリスの国宝みたいな絡みなので、イギリスを広めることにもなるって事で。
—–それで就労ビザが出るんですか?
いや、アーティストビザっていうまた特殊なビザだったんですよ。だから音楽でしか食っちゃいけないから、逆に地獄でしたね。
—–それは、パン屋とかで働いちゃダメなんですね。
ダメなんですよ。だから隠れてお好みやさんとかでお手伝いして現金を生で貰う感じでしたね。
—–そうなんですね。それはそういう名目でやるしかない感じですよね。
少し音楽の部分に話しを戻しまして、向こうでバンドをやっていた時は日本人同士でやることが多かったんですか?
日本人もそうだし、あとは、ブラジル人だったり、もちろんイギリス人もいたし、中国とか韓国とか色々な国の人がいましたね。
—–それぞれの国に帰ってしまったメンバーとは今でも繋がりはあるんですか?
そうですね、今はFACEBOOKとかもあるので、一応そこで繋がってますね。
—–みんな音楽続けている感じなんですか?
一番僕が兄弟っていっていたブラジル人はやりながら頑張っているみたいですね。
—–それは刺激になりますよね。
そうなんですよ。イギリス時代にはBo NingenのKohhei君とかもいた時期があって、その時にいたメンバー(Kyohei)も去年戻ってきて、今回の作品でもやってくれていて、4年、5年位は離れていたんですけど、そうやってまた自分のバンドとかをやって戻ってきたいって時はウェルカムな気持ちでいようと思ってますね。
—–活動拠点を日本にしてからはどれ位経つのですか?
この間、たまたまウィキペディアで知ったんですけど(苦笑)、来年ちょうど10周年なんですよね。日本に戻ってきてからは8年位ですかね。
—–音楽活動の期間としてはイギリスと日本と半分半分位になるんですよね。
そうですね。Day and Buffaloに関しては日本の方がちょっと長いかな位ですね。
—–今回のメンバーはいつ頃から集まって動き出したのですか?
今回のメンバーというのは、『Ghost Walk』を制作したメンバーですよね?
—–あっ、そうか!? 作品がリリースされたので、今現在はまた違ったメンバーで動き出しているんですね?
そうなんですよ。
—–それでは、『Ghost Walk』制作時の話にしましょう。
『Ghost Walk』を録ったメンバーは日本で僕がすごいカッコイイと思っている”MIRROR MOVES”ってバンドがいて、去年位にそのドラムにレコーディングでちょっと参加してみないかって、Day and Buffaloでは以前に”雷熊”って楽曲でも叩いてくれているんですけど、それでもし良かったらまた助けてくれないかって話をして参加してもらったんですけど、それで、その時に昔から残ってくれているブルースマンのギタリストのMASAさんとロンドン時代にも一緒にやっていたギターのKyoheiと結構男くさい感じでやっていて、それでMASAさんは40歳になったら自分のバンドをやりたいってことをずっと以前から言っていたので、今回の音が撮り終わった後に一旦抜けて、それと同時にドラムの彼も一旦抜けるといった形になりましたね。
—–実質、1年位で集まって、曲作って、レコーディングしてって感じですか?
このチームはそうでしたね。
—–それで、ツアーを周ったり、ライブをいっぱいやるってわけではないんですね。
そうなんですよ。本当だったら同じメンツでやればいいのにって思うんですけど、ミュージシャンって面白いもので、作品を作ったらそこで完結しちゃう人が多いんですよね(笑)僕はずっと続けているからその後も考えながら動いてはいるんですけどね。
—–今現在はまた違うメンバーで動きだしているんですよね?アー写とか全然違いますもんね。
そうなんですよ、11月12月くらいからそろそろレコーディングがはじまるので、ここからまた今のメンツの音で制作を開始している段階ですね。だからすごい変わった活動になっているんですよね。
—–そうですよね。リリースされたばっかりの最新の音源とアー写が合致していないので「あれっ」って思う人はいるかもしれないですね(笑)
たぶんみんなそう思っていると思います。なんなんだって(笑)確かに謎な形になっちゃうんですよね。前に行ったり、後ろに下がったり。今回の作品にはシークレットトラックとして昔作った作品が4曲入っているんですけど、ちょっとそういった僕らの特徴を入れたくてそういった形にした部分もありまして、前に進んでいるんですけど、違ったものも入っているといった、そういう感覚も込めて作っている作品なんです。
—–バンドを抜けるって人生の岐路位の大ごとな人もいる中で、Day and Buffaloの場合は割と気軽に抜けたり、入ったりできる形態なんですね。
僕はそうしてたいんですよね。なんか、色々事情があってバンドができなくなるって普通にある話なので、それで「もう解散だから…」みたいにはしたくなくて、いつでも帰って来れるようにはしておきたいですね。
—–毎回メンバー変わるっていうのも大変そうですけど、色々な人とやれるのが楽しかったりもするんじゃないですか? ギターとかだったら人数増えてもやっていけますもんね。
そうなんですよ。『Ghost Walk』の時はブルースマンだったし、今のギターはもう少しエレクトロとかすごいおしゃれな音を出して来たり、その前とかはもっとノイズギターが得意だったり、初期のころのBo NingenのKohhei君なんかはすごいサイケデリックな音を出したり、その時のキャラクターによってみんな出す音が違うからその時、その時が面白いですよね。
—–作品が持つテーマというか、それを超えたスト-リー仕立てのようなものは森さんから発信されている感じですか?
そうですね、今回の『Ghost Walk』は、死んでしまった後、死後に凄い面白い世界が広がっているんですけど、生きていた時の記憶ばっかりを気にしてしまって、楽しめない人の話を書いていて、だから逆再生で生きていた頃の記憶(過去の音源)をみつけられるっていうのをテーマにしていて、昔しか見ないで今を楽しめないっていうのは、自分にとってもそうならないようにしたいっていうのがありますね。
—–ロンドンと東京を活動拠点として比べた時に、あえて東京の方が良いと思う点って何かありますか?
ある意味、向こうもこっちも最近似てきているんじゃないかと思うんですよね。
—–どちらも色々なものが色々な所から集まってくる街ではありますもんね。
そうなんですよ。それでちょっと前までは、ロンドンの方が音楽に関しては寛容だとずっと感じていたんですけど、最近日本も「音楽って飯食えないじゃん」って感覚になって、良くも悪くも、みんながおもいっきりカッコイイ事をしようとしている流れを感じるんですよね。
—–開き直った事で新しい事が生まれようとしていると。
そうなんですよ。だから僕が求めている音楽の世界って良くも悪くも、お客さんに向けた商品化というよりは、同じ仲間たち、音楽家に向けたぶつかり合いというか、そういうのが理想だと思っていて、日本はそれにすごくなってきているのかなと。もちろん「売れたい」って願望は僕も含めてすごい持ってはいるんですけど、それ以上に生き方の哲学として音楽をやっている人が増えている気がしますね。
—–Day and Buffaloとしても当然そういった意思というかベースがあるわけですね。
もちろん売れる事を目標にしないとミュージシャンはダメだと思うんですけど、僕が今一番見てもらいたい人達っていうのは音楽家の人なんですよね。同じミュージシャン達に色々発信して、「こういうやり方があったか」とか「僕だったらさらにこうしたら売れるんじゃないかな」とか思ってもらって、新しい事をやってくれるのが、僕が日本でやり続けてきた中の目標でもあるんですよね。
—–それは音楽に限らずどの分野でも通ずる部分ですよね。些細なくだらない話しからでも、「これはできないけど、このやり方はあるよね」っていう意見がぶつかり合った時の楽しさって絶対ありますもんね。
そうですそうです。それで結局僕みたいなタイプは、そういった中で無茶苦茶なことを言っても、絶対実現してやるって意識でいつもやっているんで、もっと若い子たちに向けても「いけるな!」っていう何かのきっかけになれば良いと思いますね。
—–Day and Buffaloとは別で森さん自身が下北沢のレインボー倉庫で定期的にやっているイベントなんかもそういった意識なんですよね?
レインボー倉庫でやっているイベントは基本毎月、僕がソロでやっているんですけど、とにかく屋上でやるのがすごく良くて、今僕がリスペクトしているバンドメンバーのシンガーが凄い面白いやつで、良い意味で音楽をいっぱい見ているから、「こういう所でできたら最高なんだよねー」っていうような事をボソって言ったりするので、それを僕が試しにやれるようにしようと思って、屋上で映画とかみたりしながらできたら良いのになって思っていたところに、「イベントやりませんか?」って話を頂いて、それで場所を見たときに屋上の部分はそれまでそういったイベントでは使ってなかったらしいんですけど、僕らが持っていたイメージとピッタリだったので「ここ使わせて下さい」って言って。実際音量の問題など言われたんですけど、「小音量をテーマにします」って言って使わせてもらって始まったんです。そういうのもあって、小音量でカッコイイ事ができる人達を集めて、それでできれば同じメンツでやるっていうのが僕の中であって、その中で新しいアイディアが出てくれば良いかなと。やり続ければマンネリ化してくるので、そうなった時にクリエーターは絶対なにかを変えようとするので、それが楽しみでもあるんですよね。
—–今は屋上でアコースティックになるんですか?
でもアンプは有りだし、ドラムを持ってきたりする場合もあるし、みんな好きにやってますね。
—–それでプロジェクターで映像を映してっていうのがベースとしてある感じなんですね。
そうです。それで色々と今はチームが出来上がったので、そこからさらに今度はこういうイベントをやったら面白いだろうなとかいう話をみんなでしている感じですね。
—–そうやって色々、形にしていく面白さっていうのは常にありますよね。
Day and Buffaloとしては、その他、直近で何か予定などありますか?
去年、僕らをテーマにした映画を作ってくれた方がいて、それがもうすぐ公開になります。
—–ショートムービーみたいな感じですか?
そうです。15分位のショートムービーなんですけど、それが凄い面白いので是非観て頂きたいです。
—–それは密着ドキュメンタリー的なものですか?
いや、完全に僕らの音楽を聴いて、ストーリーを監督が作ってくれた形ですね。
—–特にメンバーが出演しているとかではないのですか?
一応、出てはいるんですけど(笑)ほとんど一瞬ですね。演奏している瞬間が。
—–なるほど、監督の方がイマジネーションを膨らませて、役者も集めてくれてって感じなのですね。
そうです。そういう感じです。
—–楽しみですね。でもそういう風に動いてくれる方がいるっていうのは、バンドとしてはすごい嬉しい事ですよね。
いやぁ~、ほんと嬉しいですよ! 恵まれたバンドだなって思いますね。そういう面白い事が毎回起こるので。だから、変な人がたくさん集まってくるバンドだと思って頂けたら良いと思います(笑)。
Day and Buffalo『”Ghost Walk” Release Party』Photo Report (2016.10.29)
photo by ERIBON
リリース情報
Day and Buffalo
『Ghost Walk』
2016.10.19 Release
01.sapirispiro TamaSi
02.惑星メランコリア
03.tweet girl
04.Loop
05.Days
06.President Skull
07.おばけ町
DADDY-0369 ¥2,160
FORMAT : CD
LABEL : GNB Records
※本CDにはシークレットトラック(マイナストラック)が存在します。
シークレットトラックの再生には特定の再生環境が必要となりますので、あらかじめご了承ください。(アーティスト調べではソニー製品のみ再生可能)
※新宿TOWER RECORDS、渋谷TOWER RECORDS、ライブ物販での限定発売になります。
Day and Buffalo
『MY SHORT BRAIN』
2016.11.23 Release
01.kiss my devil
02.Bye Bye Daddy
03.サイケな少年は痛みの中
04.you need a sheep
05.孤独は消える
06.Slow life act
07.Catch me if you can
08.空気鹿
09.Lost morning
10.Daddy`s creature
DADDY-1114¥2,160
FORMAT : CD
LABEL : GNB Records
※2013年に発表した作品がシャケットを新調し全国流通としてリリース。
Day and BuffaloのAlbum [Ghost Walk ]予告
MORE INFORMATION
Day and Buffalo official website
http://dayandbuffalo.com/