Profile of |ZORN|
昭和レコード所属のラッパー、ZORN。葛飾で育んだ価値観や感性は環境や生活の変化と共に研ぎ澄まされると同時に穏やかに慈しむように温もりを帯びた。あくまで等身大で浮かび上がらせる、その日常生活を飾らずドラマチックに表現したニューアルバム『生活日和』を2016年10月26日にリリース。淡々としながらも、情緒豊かに臆さず、気負わず、今を生きるZORNに話しを伺った。
ZORN Interview
—–ニューアルバムのタイトルが『生活日和』という事で日常生活にフォーカスを当てた内容ですね。これまでというのは、そういった日常をリリックにしてはこなかったのですか?
いや、そんな事はなくて、今までも日常でしたね。でも今回はより生活という部分を出していますね。
—–それを今回、明確にアルバムのテーマとして設けた意図みたいなのってあるんですか?
前作のアルバム(The Downtown)の中に”My life”って曲があって、それで広く認知してもらったと思っていて、それがだいぶ生活感みたいなものをさらけ出していたんで、その延長ですね。
—–反響を受けてという事ですか?
でもまあ、自然とそれしか歌うことがないというのもありますね。
—–という事は、ここで歌っている部分が今は完全に中心といった感じなんですね。
そうですね。その通りの生活をしていますね。
—–なんかドキュメンタリーを見ているような作品ですよね。
あっ、本当ですか(笑)
—–これは日々こういったリリックを綴っていたわけではなく、このテーマを決めてから書き上げた形ですか?
そうですね。でもリリックを書くってなったら日々想っている事しか出ないですね。それをまとめていくみたいな感じですね。
—–そういった日々想っている事を改めて形にしてみてると、以前と比べての変化を感じるんじゃないですか?
今は環境とかもだいぶ落ちついているんで、それで同じ日常を書くにしてもより穏やかだったり、よりポジティヴだったりは今の方がしますね。
—–今作はわりとすんなり完成した感じですか?
そうでもないですね。今回は1曲1曲時間をかけてリリックを書いたというか、元々そういうタイプなんですけど、だからすんなりではないですね。
—–それは伝えたい事に対しての言葉選びみたいな部分ですか?
言葉の選びもそうですし、順列とか、足したり引いたりの作業であったりとかバランスを結構考えていて、あとはそのリリックを聴かせるためのフロウとか発声とかビートのとり方とかですね。
—–結構テクニカルな部分の作業ですね。
そうですね。そのバランスを考えてますね。
—–リリック全体のポジティヴな雰囲気とは裏腹に、やっぱり生みの苦しみというのはあるんですね。元々の伝えたいメッセージ的な部分の内容は比較的最初からまとまっていた感じなんですか?
そうですね。そこを核に進めましたね。
—–これは制作の時毎回そういう感じなんですか?
毎回ですね。かけた時間イコールかっこ良さではないと思うんですけど、パッとやってできたものには愛着が持てないんですよね。
—–今作は特に『朝起きるのがつらい』とか誰しもが抱く等身大の部分も印象に残りましたが、通常、アーティストとしてステージに立つときに心掛けている事って何かありますか?
そのステージに立っていない時と同じでいるようにしていますね。あまり、自分の日常生活と音楽を分けることなく一緒でいれたら良いなって心掛けています。
—–今は生活の中で特別音楽に比重を強く置いているというわけではないのですか?
ではないですね。子育てもあるし、仕事もあるし。
—–元々ラップをはじめたのは何歳の時ですか?
15歳ですね。
—–なんかきっかけはあったのですか?
最初はバンドがやりたくて、僕らの世代って凄いミクスチャーが流行っていて、それでバンドでラップをするっていうのがやりたかったんですけど、そういうのを一緒にやれる仲間がいなくて、でもラップをやっている人達は周りにいて、なので僕はラップがやれればいいやって感じでヒップホップに行きましたね。
—–その頃も、活動のペースとしては生活の一部といった位の比重だったのですか?
いや、ラップを始めた時は不真面目だったりもしたので、ラップだけをしていた時もあるし、もっと適当だったというか、全然そんな感じではなかったですね。
—–その時もリリックは今のように日常を切り取っていたのですか?
いや、その頃は日常がテーマとかいうよりは、もっとこう野心とかそういったものが強かったですね。
—–ちなみに将来はどうなりたいって思ってましたか?
その時からやっぱりラップでやっていきたいって思ってましたね。
—–それでいくと今はイメージしていた通りですか?
なってますね。
—–それは素晴らしいですね。
いやいや、そうでもないです(笑)
—–それで、話を再び今作の事に戻しまして、夕方ノスタルジーという楽曲では、WEEDYさんを客演で招いていますね。
はい、WEEDYは前作で”葛飾ラップソディー”という曲を一緒に作っていて、今回はその続編的な感じでやりたくて、共作っていったら大袈裟かも知れないんですけど、トラックを渡したらこういう物になるだろうと、お互いフィーリングでやれましたね。
—–客演に関しては、今の現状を考えるともっと色々な方に参加してもらう事も十分可能だと思うのですが、今作はこの1曲にとどめたという意図は何かありますか?
アルバムの全体像みたいなのは作り出す前からあったので、その出したい生活感みたいなものの中に僕以外の人のラップはいらないかなと。
—–なるほど、それにも関わらずWEEDYさんにご参加頂いたのは?
そこは、まず僕ができない事ができるっていうのが1つあるのと、あと僕がすごく好きなんですよね、WEEDYの歌が。地元が隣で、僕は葛飾区でWEEDYは江戸川区なんですけど、その下町の情緒感というか、いなたさみたいなものが出せる奴なんで。
—–そういった部分も含めての全体像みたいなのが最初からあったんですね。
全体の雰囲気と統一感のあるものにしたいっていうのはありましたね。
—–最後の”Letter”って曲とかだいぶ涙腺くすぐられましたよ。
ありがとうございます(笑)
—–こういった生活感満載の作品の時、自分自身をどこまで晒すかみたいな部分での線引きだったり、葛藤とかはないんですか?
今はあんまりないですね。
—–今はという事は、以前は少なからずあったのですか?
“My life”って曲を出してからは、本当にあれが自分そのものだって言える曲なので、なんかそれでようやく自分になれた気がしていて、だから何を言って何を言わないっていうのはあるけれど、でも言う。そこまで踏み込まなければ伝わらないと思うんですよね。”Letter”とかは僕にしか言えない事だと思うし、やっぱそこまで言わないと聴いている人の心は動かないと思いますね。
—–そして、12月18日(日)渋谷WWW Xでのイベントの事も少し伺いたいのですが、これは今回のレコ発という形ですよね?
そうですね。
—–これから仕込む部分も多いとは思いますが、現状どういったイベントになりそうですか? ワンマンライブという事はすでにアナウンスされていますね。
そうですね、2時間位はやると思います。
—–新旧楽曲織り交ぜてって感じですか?
そうですね。まだ今回のアルバムの中の曲はライブでは全くやっていないんですけど、それまでに色々な所でライブをするのでその中で形にしていきたいですね。
—–その他、リリース後の予定としてはどういった感じですか?
まず昭和ツアーというのがはじまりまして、般若さんとSHINGO★西成さんと一緒に全国何か所かやっていくのプラス個人的に福岡とか地方の色々な所でライブをやるのを同時進行でやりつつワンマンに備えるって感じですね。
—–一応、そこまでが今決まっている感じなんですね。
色々他にも決まっている事はあるんですけど。
—–そうすると中々家族団らんできないですね(笑)
それはあんまりできないんですけど、家にいる時はやっています(笑)
—–ちょっと話ずれちゃいますけど、今も葛飾にいるんですか?
はい、葛飾に住んでます。
—–葛飾の良さってどういった部分ですか?
あー、でもなんか、よく解かんないんですよね。
—–結局、知り合いがいて、知っているお店があるっていうのだけで地元っていうのは充分なのかも知れないですね。
ほんとにそれだけの事だと思いますね。街が好きというより、そこに友達とか家族がいるって事ですよね。
—–でもラッパーとして育む部分でその土地が持つ力みたいなものってあると思いますか?
あると思いますね。その環境は。葛飾はそういう意味でみんなマイルドヤンキーなので。
—–なるほど、素で面白い人が多いみたいな。
(笑)そうですね。確かにそうですね。なんかいなたくて、渋谷とかは疲れちゃうんですよね。
—–どこまでがっていうか、あの辺も傍から見ると結構細かいですよね。小岩と新小岩とか(笑)
ああ、違いますね(笑)小岩は江戸川区で新小岩は葛飾区ですね。
—–下町って事でざっくり同じじゃダメなんですね(笑)やっぱりそこは区切らないと。
結構、そこは区切らないと(笑)
—–色々レペゼンをいうには(笑)
ありますね、違うんですよ(笑)仲は良いんですよ凄く。
—–そうですよね(笑)あと、また少し話を戻しまして、今作のMUSIC VIDEOに関してはどういった感じでしょうか?
今、”夕方ノスタルジー”が完成していて、このあとも何本か撮る予定なんですけど、制作してくれた飛沫(しぶき)とは同い歳で昔からの友人なので、話しながら雰囲気だけ伝えて、お任せしている感じですね。結構感覚が一致しているので。
—–あと、ジャケ写なんかもすごく風情のある感じですよね。あれはご自身のアイディアですか?
あの絵は僕のアイディアなんですけど、それも飛沫が撮ってくれて、ポラロイドカメラで撮ったんですよ。最近はまっているんです。
—–ポラロイドに?
はい。
—–元々そういうアナログ好きなんですか?
いや全然そうではなかったんですけど、インポッシブルっていうカメラの会社の仕事をさせてもらう事があって、その時ポラロイドカメラを頂いて、それで使ってたら結構楽しいなと思って。
—–良いおもちゃみつけちゃったなって感じですね。
そうですね(笑)
—–あと、今なんか他にはまっている事ってありますか?
読書が楽しいです。ずっと昔から読書が好きで、でも一時期全く読まなくなっていたんですけど、最近また週1冊くらいは読むようにしています。サスペンスとかファンタジーとか詩集とかなんでも読みますね。
—–それはリリックや言葉選びへの影響もあるんじゃないですか?
でも、そこから何かを汲み取ろうというよりは単純に娯楽としての気晴らしですね。
—–なるほど、その影響というわけではないのかも知れないけど、ZORNさんのリリックは英語が少ないですよね。
そうですね。それはよく言われますね。やっぱり日本語は綺麗だと思うんで。
実はさらに昔はもっと日本語日本語していたんですよ。今は程よい所で落ち着いてっていう意識なんですけど、日本語でやるのが一番楽しいですね。
—–ラップをするという事に関してもずっと楽しみながらやれている感じなんですか?
そうなんですよね。楽しいだけなんですよね。ラップは手軽さ、敷居の低さっていうのも最大ではないにしろ魅力の1つだと思うし、それ故にというわけじゃないですけど、なんというか奥深くて楽しいですね。だから続けているのも、それを努力と呼ぶのか情熱なのか何なのか分からないんですけど、ただただ楽しいですね。
リリース情報
前作”The Downtown”で着実にネクストステージに駆け上ったZORN、1年半振り通算6枚目のアルバム『生活日和』が完成! 昭和レコードより 2016.10.26リリース。
“11編の路上の芸術”を描いた前作「The Downtown」から、その視点はより「日常」へ。今回は「LIFE」をテーマに掲げ、普段の生活を通してふと気付いたことや感じていることを、飾らずに、しかしリリカルに描いたコンセプトアルバム。限定盤はZORNの素顔に迫ったオフショットや、ライブでのバックステージ、エクスクルーシブなフリースタイルなどを収録した30分前後のDVDを付属した2枚組。
また、12月18日(日)デイタイムに@渋谷WWW XでのワンマンLIVE「おゆうぎかい」を開催決定!!!※前売チケットはアルバム発売日(10/26)から販売開始予定になります。
ZORN
『生活日和』
2016.10.26 Release
01. Life Size [Track by Estra]
02. マイペース [Track by Estra]
03. DIY [Track by dubby bunny]
04. Brand New Day [Track by DJ OKAWARI]
05. コインランドリー(Interlude) [Track by dubby bunny]
06. 夕方ノスタルジー feat. WEEDY [Track by dubby bunny]
07. スイミー [Track by A-KAY]
08. ワンシーン [Track by Yakkle]
09. グッナイ(Interlude) [Track by OMSB]
10. 雨ニモマケズ [Track by OMSB]
11. シャウエッセン [Track by A-KAY]
12. Letter [Track by EVISBEATS]
初回店頭特典: 未発表曲「どうでもいい」収録のシングルCD。
※注意 : 特典付与店舗に関しましては各位店頭で事前に御確認の上ご購入ください。無くなり次第終了致します。
●通常盤●
CAT NO. : SHWR-0045
FORMAT : CD
税抜価格 : 2,315円
●完全生産限定盤●
CAT NO. : SHWR-0046
FORMAT : CD+DVD(”生活日和”的映像収録)
税抜価格 : 3,241円
LABEL : 昭和レコード
ZORN – 夕方ノスタルジー feat.WEEDY
MORE INFORMATION
ZORN Official Website
http://zorn.tokyo/
Twitter
https://twitter.com/__zorn__