Skaville Japan ’16 ＠日比谷野外大音楽堂 (2016.09.10) ～REPORT～

Skaville Japan ’16 ＠日比谷野外大音楽堂 (2016.09.11) ～REPORT～

1997年にリリースされたコンピレーションアルバム『Skaville Japan』を発端にスタートしたイベントは一時代を司り、極めて快楽的で解放感あるイベント像を築き上げ、今では多くのルーディー達が1年間首を長くしてこの日を待ちわびている。20年目に到達した夏の終わりの風物詩、国内屈指のスカバンドが集うSkaville Japan（スカヴィルジャパン）が今年も日比谷野外大音楽堂で歓喜の極みを魅せつけた。

今年はチケットもソールドアウト。程よい列と人垣が左右後方まで連なり賑わいを見せた。そんな中、刻まれたリズムと揺らされる体、キラースカもオーセンティックな音楽も軽快な音楽も全身で味わう粋な大人達。時代の移り変わりを見て来たであろう子連れの方や開演前から前飲みを催したであろう盛大なグループなど客席も抜群の雰囲気の中、充実した晴れやかさと暖かい日差しを受け、自然発生するダンスやステップ。会場はほろ酔いから泥酔者まで存分に垣間見れる大胆かつのびのびとしたたたずまいを見せていた。

なんせ、このメンツですから、踊ろうが聴き入ろうが、飲み明かそうが楽しくないはずがない。黄昏時のスタートから全バンド参加のアンコールまで、1バンドあたりの演奏時間は決して長いわけではないが、テンポ良く展開していく中で各バンドが魅せる特色やクオリティーの高さに飽きる事や物足りなさを感じる事は皆無。それぞれの具体的な内容は割愛させてもらうが、限られた時間でも皆がきっちりハイライトを示していたように思う。RUDE BONESの躍動感、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAの風格、LITTLE TEMPOがもたらした安らぎ、THE SKA FLAMESの貫録、COOL WISE MANのみせた恍惚、そしてOi-SKALL MATESの爆発力。さらに共通して見受けられる人間味の豊かさとルーツへの敬愛。

KING OF SKA、プリンス・バスターの訃報が伝えられたのは奇しくもこの日の3日前。きっとここにいる誰しもが何らかの影響を受け、気が付けばこういった音楽に触れることができる恩恵を受けてきたであろうレジェンドへの愛情と敬意はこの日一貫して感じることができた。思い返せば、昨年も開催前にトロンボーン奏者のリコ・ロドリゲスの訃報が伝えられ、締め付けられる想いが滲んだわけだが、生死はどうすることもできないし、これからも悲しい別れはあるかもしれないけど、音楽自体はルーツを知り、ひとりひとりが音楽を楽しみ共鳴することで自然と伝道していくことであろう。

とにもかくにもこの日、奏でられた音楽、出演者、会場の雰囲気はかけがえのない瞬間であり、物価水準から考えても贅沢な時間であったと思う。威風堂々としながらも、それは周囲を圧するようなものではなく積み重ねたキャリアがもつ余裕というか、シンプルにそこから発せられる雰囲気は寛大かつ飄々としたものであった。

90年代の動乱期から時に鋭く、時にしぶとく、酸いも甘いも噛み分けて、色褪せることなく表現を続け、踊り続けてきた先の今。さらに深みを増しつつも緩やかに進んでいくであろうこれからの20年も楽しみは尽きない。