相模原を中心に活動する美術のたのしいコミューン【パープルーム】
その拠点であるパープルーム予備校が舞台となり展覧会『パープルタウンにおいでよ』が開催
会期:2016年7月10日(日)~7月19日(火)
今回がデビューとなる予備校生もいる中で、平山昌尚とパープルーム予備校による無料配布されるパープルタウンの地図。百頭たけしによるパープルーム予備校、及びその周辺の撮り下ろし作品。伊藤存による新しい試み。だつおによる街へのアプローチ。有馬かおるによる絵画作品などいわゆる作品以外のものもふんだんに取り入れた展覧会となっている。
それは出展作家の出自や生息環境が多様で且つ、パープルームならではのつながり方、波及も展示に反映されるパープルームの記念碑的展覧会になるであろう。
展覧会「パープルタウンにおいでよ」
【会期】2016年7月10日(日)~7月19日(火)
【会場】
パープルーム予備校
パープルーム見晴らし小屋
ゼリー状のパープルーム容器
〒252-0216
神奈川県相模原市中央区清新3丁目13-19 インベストメント清新 303号室
ゼリー状のパープルーム容器
JR相模原から徒歩10分
【開場時刻】
12時~20時
※会期中無休
【出展作家】
出展作家
有馬かおる
大島智子
KOURYOU
坂本夏子
鋤柄ふくみ
im9
マグ
タカハシ’タカカーン’セイジ
原田裕規
だつお
リスカちゃん
福士千裕
マジカル商店
平山昌尚
百頭たけし
パープルーム予備校
安藤裕美
アラン
あま
智輝
梅津庸
【企画】
パープルーム
「パープルタウンにおいでよ」特設サイト
http://www.parplume.jp/tennji/tokusetu201606.html
この度、「パープルーム」は、去年の「パープルーム大学物語」に続き「パープルタウンにおいでよ」を開催する。
パープルームとは、教育機関である「パープルーム予備校」、ウェブサイト「パープルームHP」、移動式の画廊「パープルームギャラリー」、機関誌の役割を果たす「パープルームペーパー」、「パープルームクッキング」、「パープルミーティング」など様々な活動を横断する運動体の名称である。
会場となる「パープルーム予備校」は「パープルーム」の拠点である。普段からパープルーム予備校生たちはそこでものをつくり、生活している。
「パープルーム予備校」は美術教育産業に於ける、美術予備校という裏舞台を召還しつつもその見立てをズタズタに破壊していく。
予備校の活動全てが運動であり、アトリエであり、生活空間であり、展覧会でもある。
「パープルーム」とは参加型プロジェクトでも、ワークショップでも、閉鎖的な芸術コミューンでもない。
この活動は何度か「パープルーム大学」として公の場に姿を現した。
今回の「パープルタウンにおいでよ」は私たちの「パープルーム予備校」が常に生活空間でありながら芸術空間であるということをあらためて直接的に開示する機会だ。
今、密度の高さ極まる「パープルーム」を体感してほしい。
今回、「パープルーム予備校」、「パープルーム見晴らし小屋」、「ゼリー状のパープルーム容器」という3施設にまたがるこの展覧会は相模原の街全体が展覧会だと言いたいのではない。相模原ではなく、あくまでも「パープルタウン」なのだから。
明治期の近代化に伴い突貫でつくられた美術教育制度は150年もの間、本質的には変化する事なく続いてきた。
それは問題と可能性の貯蔵庫として今もある。
洋画と日本画という対の領域を制度的または、物的問題として正していこうとするのではなく、そのシナリオを軸としながらそれを取るに足らないプロットとして活用していく方が現実的だと考える。当て木を添えて正したところで仕方がない。
もっと言えば、美術大学に於ける受験絵画は理念が欠落した構想のない技術に溺れた絵画と言われる事もあるが、それはあながち間違ってはいない。
しかし、絵画に於ける技術とはアカデミックな意味でのデッサン力に限らず、かなり変数的なものと言える。
よって、理念を補充すれば本来あるべき姿になるとはかぎらない。
私たちが歩んできた美術というものはそれなりに歪んだものであることは否めない。
しかし、それに居直るということではなく、この地形が生み出してきたものにもっと注意を払う必要はありそうだ。
「受験絵画」ひとつとってみても近代からの蒙古斑(ログ)は「ネオ受験絵画」として、切り捨てることは不可能な部位にまで染み渡っている。
そして、より重要なのは、直接的には美術の制度とあまり関係のない有象無象の創作物とこれらの制度内の表現とが可視化が困難なほど複雑な結びつき方をしているという事実だ。見るべきものはそこにある。
パープルーム予備校は、それが見える場なのである。もちろん網羅的にそれが秩序だってそこにある訳ではない。
それはインサイド/アウトサイドとオンライン/オフラインの間を絶え間なく行き来している。
現行の制度ありきの創作や批評ではなかなか立ち入れないエリアに行くためには継続的に展覧会や懇談会を超えた場をつくり、維持していく必要がある。
2013年に始動した「パープルーム予備校」はここ数年の活動を経て、表現様式や理念や出自で括られていた○○派(school)とは違ったつながりを構築するに至った。そのつながりは、かつては潜伏していたため見えにくかった名付け得ないゲル状のものたちを凝固してしまう前にあぶり出し、観測範囲/活動範囲を拡張した。
現役芸大生の安藤裕美。大学院を休学して鳥取から来たアラン。専門学校を中退後、島根から来たあま。高校を中退後、山形から来た智輝。
出自や関心事の異なる予備校生同士の反共同生活/制作は様々な養分を含んだ濁流の渦となり、絵画と絵、メモ書き、SNSの投稿、思念、、、は
絡み合いながら同時代のものたちを次々に巻き込んでいく。
「美術予備校」という見立てのもと日々生み出される作品、その副産物、出来事、テキストは、微細な酵素や花粉となり、人へ、絵画空間へ、批評空間へ、どこでもない場所へ滲みだし、創作物の生成と人生に即物的に関与する。
作品は展覧会を成立させるためのパーツではない。風景画として「パープルタウン」はここにある。
この風景画を描いたのは誰か?それは他でもない「パープルーム」だ。
私たちが日々を暮らし「もの」、「こと」をつくることを冷静に眼差してくるヒトではない研ぎ澄まされた視線。
パープルタウンにおいでよ!
文責:梅津庸一