Profile of |FUJI ROCK FESTIVAL|
DEAH GRIPS
2013年7月26日(日)FUJI ROCK FESTIVAL ’13
カリフォルニアはサクラメント発、ジャンル不明、敢えて表現するのであればノイズ・コア・ヒップホップとでも言うべきでしょうか。2010年に結成されたばかりの新しい謎過ぎるバンドがこのDeath Grips。体調を壊そうが、他のどのアーティストを飛ばそうとも、嵐が来てRED MARQUEEの屋根を吹き飛ばそうが(むしろそんな環境で見たらもっと凄まじかったであろう)絶対に今回のフジで見たかったバンドですが、まず最初に彼らがカリフォルニア出身だって事に驚かされたのです。あのカラっとしたカリフォルニアの青い空なイメージとは対称的に、ごくまれに70年代後期のBLACK FLAGや80年代のDead Kennedysなど反体制、反社会的、反抗精神なバンドが出て来る事がありますがこのDeath Gripsもその類なのでありましょうか。異例という奴です。
そんな彼らが登場したのが夜中の1時。夜のRED MARQUEEに集まるオーディエンスは踊りたくて踊りたくてウズウズしている夜遊び大好きチーム。お酒もいい感じに入ってその前のPORTER ROBINSONで体を揺らし、前調べをしていなかったフジロックのクラバー達は更なるダンス・ミュージックを求め期待していたのではないだろうか?
そんな中不気味に淡々と登場したメンバー3名。特に何か言葉を発するわけでもなく体を仰け反らして雄叫びに近いディストーションとディレイがフルに効かせた声というより音を喉から搾り出すStefan “MC Ride” Burnett
とグイグイと強靭な体でビートを叩き潰し全身全霊で音を投げつけてくるドラマーZach Hill。そしてその後ろでほぼ影としてしか認識出来ない位怪しく謎めいた雰囲気をかもし出すDJに、いたってシンプルなモノクロな雰囲気の逆光照明。無機質で機械的なステージ全体から膨張する様にフロアーに飛び出し届く彼らの妙に人間味がある包み込む様な肉声に”夜遊びダンス”を期待していたオーディエンスは確実にあっけに取られていた様子で、現にどんな音か事前調査で知っていたこの僕でさえ想像以上の衝撃としつこい位にまとわりつくリズムの残響に暫くの間現実を見失っていた位だったわけですから。
きっと嫌いな人は凄く嫌いだと思うし、曲中以外一言も発することもしない、客とのコミニュケーションも一切絶った彼らのパフォーマンス、一方的に投げつけてくる歪に包まれた音の塊を不快に思う人もいたかもしれないし、なんか怖いって思った人もいるかもしれないが、あのステージを観た人は一生忘れないであろう衝撃と色々な意味でトラウマになった事は間違いない。
初日のトリを勤めたNINE INCH NAILSしかりバンド全体の事を自分達が一番理解していて、どうやって全体を表現し見せるかという事を十分に分かってるバンドほどアーティスティックで魅力的でゾクゾクする事はない。いや、アートなんて言葉で括るほどそんな綺麗で単純な事じゃなくて、もっとなんというか人の根本的なフィジカルとメンタルな部分を刺激する生々しい人間臭いリアルな一コマというべきだろうか。
ドラムセットが壊れるんじゃないかと思う位全ての魂を使って叩くZachっと、顔の表情も分からない位の黒い影となって神懸かったもしくは悪魔が乗り移ったかの様に言葉を操るStefanのたたみ掛ける45分間に、最終的には悪魔だろうが神だろうが心底感動をした。もう一度絶対に見たい。音に憑りつかれるとはこういう事を言うのであろう。いや憑りつたのは音だけでは無く彼らの視覚もトラウマとなった。今回のベストアクトがこのDeath Gripsで決定。こういうのが嫌いな人でも一度は観て頂きたい。音楽に対する新しいアプローチの仕方を感じる事が出来るはず。
photo by kenji nishida