Profile of |LBとOtowa|
秋葉原×原宿×渋谷が生んだ新型ヒップホップインベーダー
ボンバーマンよろしく、DTM仕込みのハイブリッドなビート爆弾をあっちでドカン、こっちでドカン。
そうしてパワーアップアイテムならぬ、アナタの耳を奪っていっちゃう今度のLBとOtowa。
その爆弾の数々は毒々しいほどカラフル。ついついおびき寄せられてしまう魅惑的な輝きを放っている。
2010年にMySpaceを通じてグループを結成した彼らはSNS時代の申し子。
翌年にフリーダウンロードでアルバム『FRESH BOX(β)』を発表するとモダン×キッチュなセンスが注目され、一躍、新時代のラップシーンの寵児となった。2012年8月には初のフィジカルアルバム『インターネット ラブ』をリリース。
ヒップホップ文化とネット文化とアニメ文化とヤンキー文化をラクラクと横断してみせたこのアルバムは、旧態依然とした日本語ラップに強烈なカウンターパンチを浴びせた。
そんな彼らの2ndアルバムとなる本作『THE MAD BOMBER』は非常にポップな一枚だ。
どの曲も前作を遙かに上回る驚きのキャッチーさ。脂っこくないし風通しもいいし、高揚感に満ちていて、彼らにあるデジタルな印象を覆すフィジカルな躍動感にあふれている。
目を見張る成長。恐ろしいほどの洗練。ワクワクしちゃう機能拡張っぷり。
それでいて持ち味のギークな感性やマッドなサウンド構築術も隠しコマンドのように組み込まれているからタマラナイ。
「前回はインターネット感みたいなのが強かったけど、今回は最初からもっと一般層に近づけるように意識して作っていった。
そこにクセのあるダンスミュージックのエッセンスを取り入れられたら面白いと思ってた」(Otowa)
「前作に比べて引き算した感じ。テーマもこじらせてないし、フロウも普段ラップを聴かない人でも言葉が聞き取れるように作っている。
いろんなジャンルをかいつまんで最近のナードのセンスの良さで一枚にまとめたかったんです」(LB)
壮大なフックがが印象的な1曲目でアルバムにログインすると、前半は緩急をつけたダンスビートでジェットコースターのように展開。
バウンシーな「T.O.V.I」、ヒップホップとレゲエをMIXした「Alright!! feat. DJ松永」、スウィングジャズを取り入れた「The Mad Bomber」、ドラムンベースの「Adrenaline 100%」、爽快なエレクトロハウスの「SKY DRIVE feat. aja」と、狂熱的なビートが続きめくるめくような恍惚感が押し寄せる。
途中の「Stupid Cupid (Shootin’)」は50年代オールディーズとエレクトロとブレイクビーツと最新型TrapをブレンドしたOtowaの鬼才あふれる先鋭的な一発。
「↑↓↑↓(Shake) feat. RANL」は80sポップ×アニソン×中田ヤスタカみたいなキャンディポップで、キュートなサウンドにくるみながら自分たちの音楽作りに対する姿勢と矜持を歌う。
ミディアムテンポが並ぶ9曲目以降は失恋ソングと人生ソング。
特にラスト3曲は歌詞に描かれる心情がひと繋ぎになるようにも工夫されていて、うつむいたり後ろを向いたり今の社会にうんざりしている同世代の20代をサルベージするメッセージを綴っている。
本作に漂うムードはファッショナブルでアヴァンギャルド、ファニーでファンシー。
キラキラしていてアッパーだけど、決してノー天気なわけじゃないし、ちょっぴり毒気もあって独自性に富んでいる。
ジャケットのアートディレクションはでんぱ組inc.、livetune、MEG、SEKAI NO OWARなどを手掛けてきた異才、ファンタジスタ歌麿呂が担当。彼のヴィジュアルはアルバムの作品性をより豊かに伝えている。
この音とこのヴィジュアルから浮かぶワードは、秋葉原×原宿×渋谷。ネットとファッションとクラブミュージックの融和。
これこそが2013年のヒップホップ発トーキョーポップだ。
LBとOtowa
『THE MAD BOMBER』
2013.08.07 RELEASE
01 Login
02 T.O.V.I
03 Alright!! feat. DJ 松永
04 Stupid Cupid (Shootin’)
05 The Mad Bomber
06 Adrenaline 100%
07 Sky Drive feat. aja
08 ↑↓↑↓ (Shake) feat. RANL
09 Time Leap
10 Negative Monster
11 Back Mirror
12 20s feat. aja
13 Wonderful World
POPGROUP Recordings / ¥2,300 (tax in)